理学療法士として30年以上、多くの患者さんの足を診てきました。そして自分自身もランナーとして走り続けるなかで、あることに気づきました。
ランナーの足の変形は、靴が原因であることが多い。
外反母趾、浮き指、扁平足。これらはランナーに非常に多い変形です。「走りすぎが原因?」と思う方も多いですが、実は靴の進化によって足指が退化していることが大きく関係しています。
靴が「進化」するほど、足指は「退化」する
現代のランニングシューズはクッション性が高く、着地の衝撃を靴が吸収してくれます。一見体に良さそうですが、これには落とし穴があります。
本来、地面の衝撃を受け止めるのは足指と足底の筋肉の役割です。ところが分厚いクッションがその仕事を肩代わりしてしまうと、足指や足底筋はどんどん使われなくなり、機能が衰えていきます。
裸足で歩いていた時代には、足指はしっかり地面をつかんでいました。しかし現代の靴、特にクッション性の高いものを履き続けることで、その機能が失われつつあります。
私の友人の話をひとつ。ランナー用の5本指ソックスを履いて大会に出たところ、走り終えた後に足指の3・4本目が同じところに入り込んでくっついていたのに、靴を脱ぐまでまったく気づかなかったそうです。「そんなことあるの?」と思うかもしれませんが、それだけ足指や足裏のセンサーは鈍感になっているのです。いつも分厚い靴に守られた現代人の足は、退化する一方なのかもしれません。
私が実践している「靴の使い分け」
だからこそ、私は練習の目的によって靴を使い分けています。
ジョグのとき → クッション少なめのシューズ
ゆっくり走るジョグこそ、足指と足底筋を鍛えるチャンスです。分厚いクッションに頼らず、足本来の力を使うシューズを選びます。
スピード練習のとき → カーボンシューズ
カーボンプレートの反発力を借りて、スピードを引き出します。ここぞという練習のときに使います。
普段の生活 → 裸足に近いサンダル系
日常的に足指を使う習慣をつけるために、ソールが薄く足指が動きやすいサンダル系のものを愛用しています。家の中や近所の移動など、少しの時間でも効果があります。
靴底を観察してください
もう一つ、ぜひやってほしいことがあります。
自分のシューズの底を定期的に観察すること。
靴底の減り方は、その人の歩き方・走り方の癖そのものを映し出しています。
内側が減りやすい人
足が内側に倒れる「過回内(オーバープロネーション)」の傾向があります。膝が内側に入りやすく、腸脛靭帯炎や足底筋膜炎のリスクが上がります。
外側が減りやすい人
足が外側に傾く「過回外(スピネーション)」の傾向があります。衝撃の分散がうまくできず、足首の外側や膝に負担がかかりやすくなります。
かかとだけ減る人
着地の際にかかとから強く踏み込むヒールストライク傾向があります。ブレーキをかけながら走るフォームになりがちで、膝や腰への衝撃が大きくなります。
左右で減り方が違う人
骨盤の傾きや体の左右差が出ているサインです。片側だけ腰が落ちていたり、脚の長さに差があったりすることも。理学療法士として、これが腰痛・膝痛・股関節痛の原因になるケースを何度も見てきました。
靴底は「体の使い方の地図」です。減り方を知るだけで、自分の走りの課題が見えてきます。そして、減ったまま履き続けることが体の傾きを固定してしまうので、早めの交換が大切です。
「高い靴1足」より「安い靴を複数」
シューズは消耗品です。高価な1足を大切に長く履くより、目的別に複数持って、早めに交換することをおすすめします。
「古い靴を大事に履くのが美学」と思っておられるランナーの方もいます。それは足指がしっかり機能している人であれば問題ありません。しかし外反母趾、内反小指、足底筋膜炎、扁平足などがある方は、自分の足に合った靴を選ぶことが先決です。
インソールで痛みや変形を補正するのも一つの方法ですが、本来は足の機能そのものをもう一度改善することを目指してほしいと思います。
ジョグ用は安価なもので十分です。足指を使うことが目的なので、必ずしも高機能である必要はありません。靴底の減りを見ながら、惜しまず替えてください。
足は走るための大切な土台です。靴選びと靴の管理を見直すだけで、故障のリスクはぐっと下がります。
ぜひ今日、自分のシューズの底を確認してみてください。
【著者プロフィール】
理学療法士30年以上。54歳ランナー。大阪マラソン4時間10分→2026年11月神戸マラソンでサブ3.5を目指して練習中。


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