「夕方になると、首が前に出て、肩がガチガチ」
「一日中パソコンに向かって、首の後ろがずーんと重い」
「ストレッチがいいのは分かっているけど、あれこれ続かない」
デスクワークで首や肩がつらいあなたに、今日はあえて「これだけやればいい」という形でお伝えします。理学療法士として、いろんな運動を知っているからこそ思うのです。続かないほどたくさん紹介するより、椅子に座ったまま、仕事の合間にできる”ひとつ”を、何度もくり返すほうがずっと効く、と。
新シリーズ「年齢のせいにしたくない姿勢の話」、第3回。今回は、スマホ首・首こりに悩むデスクワーカーさん向けの「これだけ」です。
① なぜデスクワークで”スマホ首”になるの?
まず、なぜ首がつらくなるのかを軽く知っておきましょう。仕組みが分かると、「これだけ」がなぜ効くのかも納得できます。
私たちの頭は、約5〜6kg。ボウリングの球くらいの重さがあります。これを首がずっと支えています。本来、首の骨はゆるく前にカーブして、この重さをバネのように受け止めています。
ところが、デスクワークで一日中うつむいてキーボードや書類を見ていると、頭はどんどん前に出ていきます。頭が前に傾くほど、首にかかる負担は何倍にもふくらみ、首の後ろの筋肉は休む間もなく頭を引っぱり続けます。これが、夕方の「首が重い」「肩がこる」の正体です。
しかも、うつむき姿勢では胸の前が縮んで、肩が前に巻き込み、背中が丸まります。首だけでなく、肩・胸・背中まで、まとめて前に縮こまっているのです。だからこそ——縮こまったぶんを「開いて、引き戻す」動きが効きます。
② これだけやればいい。椅子でできる首肩リセット

今日いちばんお伝えしたい「これだけ」がこれです。椅子に座ったまま、後ろで手を組んで胸を開く。縮んだ胸と肩を開き、前に出た頭を引き戻し、首の前まで伸ばせる、欲張りな1つです。
- 椅子に浅めに座り、両手を背中の後ろにまわして、左右の手のひらを合わせて指を組みます
- 組んだままひじを伸ばし、手首を軽くお尻のほうへ近づけます
- このとき両肩が上がらないように注意。耳と肩先を遠ざけるイメージで肩をストンと下げ、左右の肩甲骨を背中の中央で寄せ合います
- あごを軽く引いて、首はまっすぐに保ちます
- 余裕があれば、そのまま頭をゆっくり後ろへ倒し、あごから首の前の皮膚を伸ばすように。首の前〜鎖骨のあたりが伸びるのを感じます
- 20〜30秒キープ。呼吸は止めずに、痛みのない範囲で行います
効くポイント:いちばん大事なのは「肩を上げないこと」。胸を開こうとすると、つい肩がすくんで耳に近づきます。そうなると首の付け根によけい力が入ってしまうので、肩は下げたまま、肩甲骨だけを背中の真ん中に寄せる意識で行ってください。
首の前を伸ばす動き(手順5)は、二重あごやフェイスラインのもたつき対策にもなります。ただし、頭を後ろに倒したときにふらつき・痛み・しびれが出る場合は無理をせず、首をまっすぐに保つところまででOKです。
③ いつやる? 仕事中・休憩中・気づいたら
この「これだけ」の本当のコツは、一日に何度もやることです。1回は30秒ほど。長くやる必要はありません。そのかわり、思い出すたびにやってください。
続けるコツは、「きっかけ」を決めておくことです。たとえば——
- メールを1通送ったら、ひと組み
- コーヒーやお茶をいれる前に、ひと組み
- トイレから戻ったら、ひと組み
- オンライン会議が終わったら、ひと組み
「時間を決めてやる」より、「この動作のついでにやる」ほうが、ずっと続きます。1日に10回できれば合計5分。わざわざストレッチの時間を取らなくても、仕事の合間にこまめにリセットするほうが、こり固まる前に首を戻せて効果的です。
私自身、原稿を書いていると気づけば頭が前に落ちています。そのたびに「あ、ひと組み」と後ろで手を組む。これだけで、夕方の首の重さが変わってきます。
④ しんどい時は、この姿勢でリラックス

「リセットする元気もないくらい、頭が重い」——そんな日もあります。無理にしゃんとしようとしなくて大丈夫。そんなときは、いったん全部あずけて休む姿勢をとりましょう。
- 机の上で、両手のひらを重ねます
- その手の甲に、おでこを乗せます
- 背中は軽く丸めてOK。頭の重み、上半身の重みを、ぜんぶ手のひらに預けてしまいます
- そのままゆっくり深呼吸。お腹をふくらませて、背中側にも大きく空気を届けるイメージで、何回か呼吸します
これは、首が「頭を支える仕事」からいったん解放される時間です。重さを手に預けてしまえば、首の後ろの筋肉がふっとゆるみます。そこに深い呼吸を重ねると、緊張がほどけていきます。お腹から背中までふくらませる呼吸は、縮こまった上半身を内側から広げてくれます(第1回の肋骨呼吸ともつながります)。
1〜2分でかまいません。こちらも、ふらつき・しびれ・痛みが出るときは中止してください。
まとめ:全部やらなくていい。”これだけ”で十分
スマホ首の対策は、たくさんあります。でも、たくさんあるから続かない、というのもまた本当のところです。だから今日は、デスクワーカーのあなたに「これだけ」をお渡ししました。
- 元気なときは、後ろで手を組んで胸を開く「リセット」を、気づいたら何度でも
- しんどいときは、机に頭を預けて深呼吸する「休息」で、首をいったん休ませる
がんばる1つと、ゆるめる1つ。この2つを、仕事の合間に思い出すだけでいいのです。首は、年齢ではなく毎日の積み重ねで前に出ます。だからこそ、毎日の小さなリセットで、ちゃんと戻っていきます。まずは今、ひと組みしてみてください。次回の「年齢のせいにしたくない姿勢の話」もお楽しみに。


コメント