54歳。私はこの夏、15年間住んだマンションを売却し、9月にUR賃貸へ住み替えます。同時に、30年続けてきた理学療法士の仕事も早期リタイアしました。シングルで二人の子どもを育て上げ、その子育てもちょうど卒業したところです。
仕事、子育て、そして住まい。人生の大きな三つを、同じ年に手放すことにしました。これは「持ち物を減らす」という小さな断捨離から始まって、最後は「家そのものを手放す」ところまでたどり着いた、私の身軽になる物語です。同世代の方に、何かのヒントになればと思って書きはじめました。
断捨離の最終形は、「家を手放すこと」でした
ここ数年、私はずっと持ち物を減らし続けてきました。服、本、食器、思い出の品。一つひとつと向き合って、「これは本当に今の私に必要か」を問いながら手放してきました。
モノを減らし終えると、次は資産の整理に進みました。そして最後に残ったのが、いちばん大きな”持ち物”——マンションそのものでした。
正直に言うと、この家に不満は何ひとつありませんでした。日当たりも、立地も、住み心地も良い。だからこそ、なかなか売却に踏み切れませんでした。けれど、ひとつだけ引っかかっていたことがあります。子どもたちが巣立った後、この家は私ひとりには、あまりにも広すぎたのです。
母との同居のために買った家を、手放す
この家を購入したのは、もともと母と同居するつもりだったからです。家族みんなで暮らすことを前提に選んだ、広い間取り。けれど月日は流れ、子どもたちは一人、また一人と巣立っていきました。
そして、最後の一人が家を出ていったとき。私は静かに、「この家を手放すときが来た」と感じました。役目を終えた家を、次の誰かに渡そう——そう決めて、売りに出してから3か月。いま、9月の引っ越しに向けて準備を進めています。
「今めんどくさいこと」は、歳をとるほどもっとめんどくさくなる
売却を後押ししたのは、理学療法士として30年間、たくさんの高齢の方の体と暮らしを見てきた経験でした。私は知っています。歳を重ねるほど、体も気力も、確実に”おっくう”になっていくということを。
家の売却や引っ越しには、膨大な手続きと体力が必要です。もし今これを「めんどくさい」と感じているなら、その作業は10年後、確実にもっとめんどくさくなる。先延ばしにすればするほど、決断のハードルは上がっていきます。
今めんどくさいと思っていることは、歳をとるほど、もっとめんどくさくなる。
だから私は、まだ動ける今このタイミングで踏み切ることにしました。これは理学療法士としての、いちばん現実的な判断でもあります。
なぜURを選んだのか
住み替え先にUR賃貸を選んだのには、いくつか理由があります。
ひとつは、私が今、仕事を辞めて無職の身だということ。一般的な賃貸住宅は、収入が不安定だと審査で借りにくいことがあります。その点URは契約がシンプルで、礼金も更新料も不要、保証人もいりません。「これからの暮らしを身軽にしておきたい」という私の希望に、ぴったりでした。
そしてもうひとつ。これから先、また別の場所へ移りたくなったとき、URなら次の住み替えもしやすい。”住まいを固定しない”という選択肢を持てることが、今の私にはとても心地よく感じられます。
「やるかも」を手放して、残ったもの
手放す過程で、いちばん勇気がいったのは趣味の道具でした。私はこれまで、登山道具もキャンプ道具も持っていました。でも、思いきってすべて手放しました。
「これから時間ができたら、また始めるかもしれない」——そう思うと、なかなか捨てられません。でも、立ち止まって考えました。今やっていないことは、たぶんこれからもやらない。「やるかもしれない」という未来の可能性のために、今の暮らしをモノで重くしておく必要はないのだと。
今やっていないことは、今後もやらない可能性が高い。だから「やるかも」を手放す。
そうやって選び抜いて、私が新しい暮らしに持っていくと決めたのは、たった二つ。ヨガとランニングです。今の私が心から続けたいと思える、本当に好きなこと。それだけを残しました。
これからは、自分のための人生を
振り返れば、これまでの私の人生は、ずっと「子どもたちのための人生」でした。シングルで二人を育て上げ、その役割に全力を注いできました。
子育てが終わり、仕事も卒業した今。ようやく、自分のために生きる時間がやってきました。広すぎる家も、使わない道具も、もう必要ない。必要最低限のものだけを持って、軽やかに、自分の足で歩いていく。
人生は、何歳からでも軽くすることができます。54歳の私が、それを今、実感しています。次回からは「54歳からの身軽な暮らし」として、手放してきたことや、これからの暮らしを一つひとつ綴っていきます。どうぞお付き合いください。

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