15年住んだマンションを売りました。次にどこで暮らすかを考えたとき、私が選んだのはUR賃貸でした。
持ち家を手放して、今度は賃貸。私は今、無職です。54歳で、30年続けた理学療法士の仕事を早期リタイアしたばかり。普通に考えれば「無職の54歳が、これから部屋を借りる」というのは、けっこう心細い話です。
今日は、なぜURという住まいを選んだのか、その理由と気持ちを、等身大で書いてみようと思います。
無職になって、はじめて気づいた「借りる側の現実」
仕事を辞めると決めたとき、住まいのことまでは深く考えていませんでした。マンションを売る話と、次に住む家を借りる話が、頭の中ではどこか別々だったのです。
けれど、いざ「賃貸を探そう」と動き始めて、すぐにある現実にぶつかりました。賃貸の多くは、入居のときに「収入の証明」を求められます。会社員なら源泉徴収票、自営業なら確定申告書。ところが、たとえ資産があっても、安定した収入がなければ審査の壁は高いのです。借りられたとしても、選べる物件はぐっと限られてくる。
頭ではわかっていたつもりでした。でも、申込書の「勤務先」の欄を前にして、ふと手が止まる。あの感覚は、自分が思っていた以上にこたえました。30年間、毎日あたりまえに働いてきた人間が、急に「社会的な信用」という物差しの前で小さくなる。そういう経験を、この歳になって初めてしたわけです。
これは決して、自分を卑下しているわけではありません。むしろ「働いていること」がどれだけ多くの土台になっていたのかを、辞めてから知った、という話です。住まいを探すというごく日常的な行為の中に、その現実は静かに混じっていました。
URという選択肢に出会って、気持ちがふっとラクになった
そんなときに思い出したのが、UR賃貸住宅でした。正式には「都市再生機構」が運営している公的な賃貸住宅です。名前は昔から知っていましたが、自分が住む場所として真剣に考えたのは、これが初めてでした。
調べていくうちに、私の肩の力がすっと抜けていきました。URには、一般的な賃貸につきものの、いくつかの「重さ」がないのです。
- 礼金がいらない
- 仲介手数料がいらない
- 更新料がいらない
- 保証人を立てなくていい
礼金も更新料も、考えてみれば「なぜ払うのか」がいつも腑に落ちないお金でした。それがそもそも無い。さらに、私にとって何より大きかったのが「保証人がいらない」という点です。
子どもたちはもう独立していますし、この歳になって誰かに頭を下げて保証人をお願いするのは、正直、気が重い。「迷惑をかけたくない」という気持ちは、歳を重ねるほど強くなります。その重さを、URは最初から取り払ってくれていました。
もちろん、URにはURなりの入居条件があります(収入の基準など、その具体的な中身は次回の記事でくわしく書きます)。でも私が惹かれたのは、契約そのものが驚くほどシンプルで、余計な気づかいがいらないという「身軽さ」でした。手続きの説明を読んでいるだけで、「ああ、これなら私一人でも前に進める」と思えたのです。
「住まいを固定しない」という身軽さ
もうひとつ、自分でも意外だった気持ちの変化があります。それは「持ち家=安心」という価値観を、いつの間にか手放していたことです。
マンションを買ったのは15年前。当時は母との同居も考えていて、少し広めの部屋を選びました。家を持つことは、あの頃の私にとってまぎれもなく「安心」の形でした。家族を守る土台であり、頑張ってきた証でもありました。
でも、子どもたちが巣立ち、暮らしの中身がすっかり変わった今、その広さは私一人には大きすぎました。守るべきものが変われば、住まいに求めるものも変わる。それは悪いことでも、寂しいことでもなく、ただ自然なことなのだと思います。
このシリーズで何度か書いてきましたが、私は今、「今やっていないことは、これからもやらない」という基準で暮らしを整えています。住まいも同じでした。「いつか家族が増えるかも」「いつか誰かが来るかも」——その「いつか」のために広い家を持ち続けることが、今の私にはもう必要ない。
住まいを固定しないということは、次に暮らしが変わったときも、また身軽に動けるということです。賃貸なら、合わなければ住み替えればいい。その「いつでも変えられる」という余白が、今の私にはとても心地よく感じられます。家に縛られていたのは、もしかしたら家ではなく、自分の思い込みのほうだったのかもしれません。
これから、URへ引っ越します
そんなわけで、私は近く、URの部屋へ引っ越します。マンションを売り、荷物を減らし、住まいまで身軽にして、新しい暮らしが始まろうとしています。
無職の54歳が部屋を借りる。最初は心細かったこの一歩を、私は今、わくわくしながら踏み出しています。住む場所を「所有するもの」から「今の自分に合わせて選ぶもの」に変えただけで、こんなにも気持ちが軽くなるとは思いませんでした。
次回は、その「URの部屋を、実際にどうやって探して、どう選んだのか」を具体的に書きます。物件の探し方、見学のこと、申し込みのこと——無職でも借りられた私の実体験を、これから同じことを考える方の役に立つ形でまとめるつもりです。
まとめ
住まいは、人生でいちばん大きな「持ち物」かもしれません。その持ち物との付き合い方を変えることは、生き方そのものを少し軽くすることでもありました。
持ち家でなければ不安、保証人がいなければ借りられない、収入の証明がなければ門前払い——そう思い込んでいた私に、URは「そんなことはないよ」と、静かに肩の力を抜いてくれました。
家を手放すことは、終わりではありませんでした。むしろ、自分の足でもう一度、暮らす場所を選び直す。54歳の身軽な暮らしは、まだ始まったばかりです。


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