膝が痛くなるランナーに共通する「たった1つのクセ」|理学療法士が教える原因と改善法

ランニング・怪我予防

「走るたびに膝が痛くなる」「距離が伸びてくると膝の外側がズキズキする」——そんな経験、ありませんか?

膝の痛みは、ランナーにとっていちばん多い悩みのひとつです。わたし自身も理学療法士として、膝痛を訴えるランナーを数えきれないほど診てきました。

そしてある共通点に気づきました。痛みの原因は、走り方のある「クセ」にあることがほとんどだ、ということです。

このクセを知って直すだけで、膝痛が劇的に改善するケースは珍しくありません。今回はその「たった1つのクセ」について、理学療法士の視点から詳しく解説します。

そのクセとは「ニーイン」——膝が内側に崩れる動き

膝が痛くなるランナーに共通する動作パターン、それが「ニーイン(Knee-in)」です。

ニーインとは、足が地面に着いた瞬間に、膝が内側に向かって崩れてしまう動きのことです。真上から自分の走りを見たとき、膝が親指の方向ではなく、小指側(外側)を向いていたら正常。でも膝が内側に入り、足の親指の方向や、さらにその内側を向いてしまっていたら——それがニーインです。

自分では気づきにくいのが厄介なところ。「まっすぐ走っているつもり」でも、知らないうちにニーインが起きていることがほとんどです。

ニーイン比較図(正常vsニーイン)

なぜニーインが起きるのか?3つの原因

ニーインは「膝だけの問題」ではありません。主な原因は3つあります。

①股関節まわりの筋肉が弱い

もっとも多い原因が、股関節を外に開く筋肉(中殿筋・大殿筋)の弱さです。この筋肉が十分に働かないと、着地の瞬間に股関節が内側に倒れ込み、それに引きずられて膝も内側に入ります。

「膝の痛みなのに股関節が原因?」と思うかもしれませんが、これはよくあるパターンです。痛みが出ている場所と、原因がある場所は別のことがとても多い。これは前回の記事でもお伝えした、怪我のしくみの基本です。

②体幹が不安定

片足で着地する瞬間、体幹(お腹・腰まわり)がふらつくと、上半身のバランスを取ろうとして骨盤が傾き、膝が内側に崩れます。腹筋・背筋・脇腹の筋力が不足していると、このパターンが起きやすくなります。

③足首・アキレス腱の硬さ

足首が硬くて背屈(つま先を上げる動き)が十分にできないと、着地のときに足が外側に逃げます。その代償として膝が内側に入ってしまうのです。デスクワークが多い方、革靴やヒールをよく履く方に多いパターンです。

ニーインは膝に何をするのか?

膝が内側に崩れると、膝関節にかかる力の方向がゆがみます。その結果、次のような部位に過剰な負担がかかります。

腸脛靭帯(IT band)——膝の外側の痛み

膝の外側を走る腸脛靭帯は、ニーインによって引っ張られる力が増します。これがランナー膝(腸脛靭帯炎)の主な原因のひとつです。「10〜15kmを越えると膝外側が痛くなる」という人の多くは、このパターンです。

膝蓋軟骨——膝のお皿の裏の痛み

ニーインが起きると、膝のお皿(膝蓋骨)が正常な軌道からずれます。お皿の裏側の軟骨が大腿骨とこすれ、「膝前面の鈍い痛み」「階段の上り下りで痛む」といった症状につながります。これが膝蓋大腿疼痛症候群(ランナーに多い)の正体です。

鵞足——膝の内側の痛み

ニーインによって膝の内側にもねじれ力がかかります。膝の内側やや下あたりにある「鵞足」という腱の付着部が炎症を起こすのが鵞足炎で、これもニーインと深い関係があります。

こうした膝の痛みが出ているときは、走るのをやめるのが一番ですが、大会が近いなどどうしても走らなければならない場面では、サポーターで膝への負担を分散させるのも選択肢のひとつです。整体師と理学療法士のW監修で設計されたサポーターは、薄手で蒸れにくく、長時間のランニングにも向いています。

自分のニーインをチェックする方法

まずは自分にニーインのクセがあるかどうか確認しましょう。道具は要りません。

チェック①:壁スクワット

  1. 壁の前に立ち、足を肩幅に開く
  2. つま先を壁に向けて30〜40cm離れた位置に立つ
  3. そのままゆっくりスクワット(しゃがむ)
  4. しゃがんでいく途中で膝が内側に入ってくる → ニーインのクセあり

鏡の前でやると確認しやすいです。

壁スクワット NG/OK比較図

チェック②:片足スクワット

  1. 片足で立つ
  2. そのまま片足でゆっくりしゃがむ(5〜10cmでOK)
  3. 膝がつま先より内側に入ってしまう → ニーインのクセあり

これは着地の動作に近い動きです。走っているときのクセが出やすいので、ぜひ両足でやってみてください。

ニーインを改善する3つのアプローチ

チェックでニーインが確認できたら、次の3つに取り組みましょう。すぐに始められるものばかりです。

①中殿筋を鍛える——サイドライイングヒップアブダクション

横向きに寝て、上側の足をゆっくり持ち上げる運動です。お尻の横(骨盤の外側)に効いているのを感じながら、20回×2セット。

ポイントは「つま先を前に向けたまま」持ち上げること。つま先が上を向いてしまうと、大腿筋膜張筋という別の筋肉に逃げてしまいます。

サイドライイングヒップアブダクション 中殿筋トレーニング

②体幹を安定させる——片足デッドバグ

仰向けで両手両足を天井に向けて伸ばした姿勢から、片方の腕と反対側の足を床スレスレまでゆっくり下ろして戻す運動です。腰が浮かないように、おへそをグッと床に押しつけながら行います。左右交互に10回×2セット。

地味に見えますが、これが体幹の安定にとても効きます。

③足首を柔らかくする——カーフストレッチ+足首回し

壁に手をつき、後ろ足のかかとを床につけたまま前傾してふくらはぎを伸ばすカーフストレッチを、走る前後に30秒×2セット。加えて、座った状態で足首をゆっくり大きく回す(各方向10回)を習慣にしましょう。

フォームローラーがあると、ふくらはぎだけでなく大腿部・腸脛靭帯まわりの筋膜リリースにも使えて便利です。わたし自身も練習後のケアに使っています。

走り方でも意識できること

トレーニングと並行して、走るときに意識してほしいことがあります。それは「膝をつま先と同じ方向に向けて着地する」こと。

最初は難しいかもしれませんが、「膝をやや外に向けるイメージ」で走ってみてください。スピードを落として、ゆっくり走りながら意識するのが効果的です。最初の500mだけ意識して走る、というやり方でも十分です。

まとめ——クセに気づけば、膝痛は防げる

今回のポイントを整理します。

  • 膝が痛くなるランナーに多い共通のクセが「ニーイン(膝が内側に崩れる動き)」
  • 原因は膝ではなく、股関節の弱さ・体幹の不安定・足首の硬さにある
  • 壁スクワット・片足スクワットで自分のクセを確認できる
  • 中殿筋強化・体幹トレーニング・足首の柔軟性向上の3つで改善できる

前回の記事でお伝えした「怪我の9割は同じ原因から来る」という話と合わせて考えると、膝痛の予防がよりクリアに見えてくるはずです。

痛みが出てから対処するより、クセに気づいて先に直しておく。それが理学療法士としてわたしが伝えたいことです。

足のアーチをしっかり支えるインソールも、着地時の安定性を高め、膝への余計な負担を減らすのに役立ちます。市販のシューズでも中敷きを変えるだけで着地の感覚が変わるので、試してみる価値があります。

次回は「シンスプリントは”足”ではなく”上”を見ればわかる」というテーマでお伝えします。お楽しみに。

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