「走っているとまたここが痛い」
ランナーなら、一度はそう思ったことがあるのではないでしょうか。走らなければ痛くない。でも走ると痛い。少し長く走るとさらに痛い。
膝が痛くなって休む。痛みが引いたら走り始める。しばらくすると、また同じ膝が痛くなる。このくり返しに疲れて、「自分は怪我しやすい体質なんだ」とあきらめてしまっている人も少なくないと思います。
でも、私は理学療法士として30年以上、たくさんのランナーの体を診てきて、はっきり言えることがあります。
怪我をくり返すのは、体質のせいではありません。
原因は、ほぼ毎回「同じところ」にあります。そしてその原因を知れば、怪我は確実に減らせます。
このシリーズでは、理学療法士でありランナーでもある私・KIMIが、「怪我しないからだの作り方」を全7回でお伝えします。第1回は、怪我が起きるしくみの話から始めましょう。
「使いすぎ」が原因ではない
ランナーの怪我の多くは「オーバーユーズ障害(使いすぎによる障害)」と呼ばれています。だから「走りすぎたせいだ」「練習量を減らすしかない」と思っている人が多い。
でも、これは半分しか正しくありません。
同じ距離を同じペースで走っても、怪我をする人としない人がいます。月間300km走っても怪我しないランナーがいる一方で、月間50kmでくり返し痛みを抱えるランナーもいる。
差はどこにあるのか。
答えは「距離」ではなく、「からだの使い方」です。
特定の部位に負担が集中する動き方をしていれば、少ない距離でも壊れます。逆に、負担がうまく分散されていれば、多少走りすぎても体はもちこたえます。オーバーユーズ障害の本当の意味は、「使いすぎ」ではなく「偏った使われ方のしすぎ」なのです。
くり返す怪我の4つの根本原因
私がこれまで診てきたランナーの怪我を整理すると、根本にある原因はほぼ4つに絞られます。

① 特定の部位に負担が集中するフォーム
たとえば、着地のたびに膝が内側に入るクセがあると、膝の内側や腸脛靭帯に繰り返しストレスがかかります。一歩一歩は小さな負荷でも、1回のランで何千歩も積み重なれば、組織は少しずつ傷んでいきます。
別の例として、股関節をうまく動かせていないランナーは、股関節がほぼ同じ角度のまま、曲がりっぱなしの状態で走り続けることになります。その結果、長時間走ると股関節まわりに負荷が集中し、痛みにつながりやすくなります。
フォームのクセは自分では気づきにくい。だから「なぜここが痛くなるのかわからない」という人がほとんどです。
② 弱い筋肉を別の筋肉でカバーしている
お尻の筋肉(股関節外転筋)が弱いランナーは、その分を太ももや膝まわりの筋肉でカバーしようとします。本来使うべき筋肉が使えていないため、代わりに使われている部位が過剰に疲弊し、やがて痛みになります。
「お尻を使って走る」とよく言われますが、使えていない人が多い理由はここにあります。
③ 疲労が抜けないまま走り続ける
筋肉や腱には、負荷を受けたあとに修復・強化される時間が必要です。この時間が十分に取れないまま次の練習をくり返すと、修復が追いつかずに組織が弱っていきます。
50代になると、この修復スピードが20代・30代より明らかに落ちます。同じ練習量でも疲労の蓄積が早く、怪我のリスクが上がる。これは体質ではなく、年齢による生理的な変化です。
④ 走った後のケアをしない
走り終わったあとの爽快感は格別です。そのままシャワーを浴びて、ご褒美のビールを一杯——そんな楽しみがあるから走れる、という方も多いと思います。それは次につながる大切なモチベーションです。
ただ、怪我なく長く走り続けるためには、走った後のリカバリーが欠かせません。走る前後のストレッチ、体幹トレーニング、セルフマッサージ。こうしたケアを習慣にできているかどうかが、1年後・3年後に怪我なく走り続けられるかどうかを大きく左右します。
「走ることに時間を使いたい」という気持ちはよくわかります。でも、ケアに使う10分が、走れない1ヶ月を防いでくれると考えれば、決して損な投資ではないはずです。
私が走った後に実際に使っているアイテムを紹介します。
【アミノ酸サプリ:走直後の筋肉修復に】
走り終わったらまず、アミノ酸を補給します。筋肉の修復材料を早めに届けることで、翌日の疲労感が変わります。
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【エプソムソルト:入浴でマグネシウムを補給】
走った日の夜はエプソムソルト入りのお風呂に浸かります。マグネシウムが筋肉の緊張をほぐし、翌朝のだるさが明らかに違います。
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【マッサージガン:ふくらはぎ・太もものケアに】
入浴後、気になる部位にマッサージガンを当てます。ふくらはぎ、太もも、足裏——手でほぐすより深く、短時間でケアできるのが便利です。
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30年で見えてきた「怪我しやすいランナー」の共通点
理学療法士として長年ランナーを診ていると、怪我を繰り返す人にはいくつかの共通点があります。
- 痛みが出てから対処する(痛くなるまで気づかない)
- 「走れる痛み」と「走れない痛み」の区別がない(我慢して悪化させる)
- 休養明けに元の練習量に戻すのが早い(焦って再発する)
- 補強運動をしない、またはやり方が間違っている
- フォームを意識したことがない
逆に、怪我が少ないランナーは、体の小さなサインを見逃しません。「なんとなく重い」「いつもと違う」という感覚を大事にして、練習の強度を早めに調整します。
怪我ゼロへの第一歩は、体の声を聞く習慣を持つことです。
このシリーズで学べること
全7回を通じて、次のことをお伝えします。
- 第2回:膝が痛くなるランナーに共通する「たった1つのクセ」
- 第3回:シンスプリントは「足」ではなく「上」を見ればわかる
- 第4回:アキレス腱を壊すランナーが無意識にやっていること
- 第5回:股関節が使えないランナーは、なぜ膝と足首を痛めるのか
- 第6回:ランニング中の腰痛は「走り方」で8割改善できる
- 第7回:怪我ゼロで走り続けるために、理学療法士が毎日やっていること
私自身、54歳になった今も月間300km前後を走り続けています。若いころと比べれば確かに体は変わりました。でも、からだの使い方を知っているおかげで、大きな怪我なく走れています。
怪我で走れない時間ほど、もったいないものはありません。正しい知識を持って、長く・楽しく走り続けましょう。
まとめ
- ランナーの怪我の多くは「使いすぎ」ではなく「偏った使われ方」が原因
- 根本原因は①フォームのクセ・②筋力のアンバランス・③疲労の蓄積・④ケア不足の4つ
- 50代は修復スピードが落ちるため、回復とケアの時間をより意識する必要がある
- 怪我をくり返す人には共通のパターンがある。そのパターンを知ることが予防の第一歩
次回は、最も相談の多い「膝の痛み」について、理学療法士の視点で深く掘り下げます。


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