ランナーはなせシンスプリントになるのか?
「脛(すね)の内側が痛い。でも、アイシングしても、ストレッチしても、なかなか治らない」
そう感じているランナーは多いのではないでしょうか。
シンスプリントは、ランナーにとってよく知られた怪我のひとつです。しかし、「脛が痛いから脛をケアする」という考え方だけでは、なかなか根本解決に至りません。根本的なことを変えないと再発してしまうからです
私は理学療法士として多くのランナーのからだを見てきましたが、シンスプリントで繰り返し悩む人には共通したパターンがあります。それは、「痛い場所だけを見ていて、痛みの原因になっている”上”を見ていない」ということです。
この記事では、シンスプリントの基本から、ランナーに起きやすい理由、そして理学療法士的な視点で「なぜ上を見る必要があるのか」を丁寧に解説します。
シンスプリントとは何か
シンスプリントとは、脛骨(すねの骨)の内側に沿って痛みが出る状態のことです。正式には「脛骨過労性骨膜炎」と呼ばれ、骨を覆っている骨膜に繰り返しの負荷がかかることで炎症が起きます。
症状の特徴としては、以下のようなものがあります。
- すねの内側、下から3分の1あたりに痛みや違和感がある
- 走り始めは痛いが、温まると和らぐことがある
- 走り終わった後や翌朝に痛みが強くなりやすい
- 患部を押すと広い範囲にわたって痛みがある
疲労骨折と症状が似ているため、痛みが強い場合や長引く場合は、自己判断せず医療機関を受診することをおすすめします。筋肉の痛みと違って、骨膜の痛みは独特な痛み、そして一度炎症が起こると摩擦を軽減しないと治癒方向には向かいにくいです
ランナーはなぜシンスプリントになるのか
シンスプリントは、骨膜への繰り返しのストレスが蓄積することで起きます。ランナーに多い理由には、次のようなものがあります。
練習量の急激な増加
週の走行距離が急に増えたとき、からだがその負荷に慣れる前に骨膜へのストレスが限界を超えます。「先月より月間100km増やした」「大会に向けてペース走を急に増やした」といったタイミングで発症しやすいです。
硬い路面でのランニング
アスファルトやコンクリートの上を長時間走ると、着地のたびに脛へ伝わる衝撃が大きくなります。クッション性の低いシューズとの組み合わせはさらにリスクが高まります。
オーバープロネーション(足の過度な内側への倒れ込み)
着地時に足首が内側に倒れすぎると(オーバープロネーション)、脛骨の内側に引っ張るような力が繰り返しかかります。これが骨膜への慢性的なストレスになります。
走り方の癖
ストライドが大きすぎる、かかとから強く着地する、などのフォームの癖も、脛への負担を増やす要因になります。
これらの要因が重なると、シンスプリントは起きやすくなります。ただし、これらの「足回りの問題」だけを見ていると、根本の原因を見落とすことがあります。
「足」を見ても原因はわからない理由
そもそも、脛の内側についている筋肉(後脛骨筋など)は、細く小さな筋肉です。足首の安定や足のアーチを支えることが本来の役割であり、長時間・繰り返しの大きな負荷に耐えるようには設計されていません。にもかかわらず、走り方や体の使い方によってその小さな筋肉に負担が集中し続けると、やがて骨膜にまでストレスが波及してしまいます。
シンスプリントになったランナーのほとんどは、「すねが痛い→すねをケアする」という発想になります。患部をアイシングする、ふくらはぎをストレッチする、テーピングを巻く。これらは一時的な痛みの緩和には有効です。
しかし、それで「治った」と感じて走り再開すると、また同じ場所が痛くなる——このパターンを繰り返すランナーがとても多いです。
なぜか。それは、シンスプリントが起きている「脛」は結果であって、原因ではないからです。
脛への過度な負荷は、足首や足部だけで生まれているわけではありません。走るという動作は全身運動です。骨盤の傾き、股関節の動き、体幹の安定性——これらが崩れると、そのしわ寄せが脛に集中することがあります。
“上”を見る=骨盤・股関節・体幹に原因がある
理学療法士の視点でシンスプリントのランナーを評価すると、足首や脛だけでなく、股関節・骨盤・体幹の機能低下が見つかることが非常に多いです。
股関節の外転・外旋筋の弱さ
股関節の外側の筋肉(中殿筋など)が弱いと、着地のたびに骨盤が横に揺れます。骨盤が揺れると、膝が内側に入りやすくなり(ニーイン)、その影響が足首・脛へと連鎖します。脛骨に内側へのねじれストレスが加わり、骨膜への負荷が増します。
体幹の安定性不足
体幹(腹筋・背筋・骨盤底筋など)の安定性が不足していると、走行中に骨盤の前傾や後傾が強くなります。骨盤の位置が安定しないと、脚全体のアライメント(配列)が崩れ、脛への負担が偏ります。
腸腰筋の硬さ・弱さ
股関節の前面にある腸腰筋が硬かったり弱かったりすると、走行中に骨盤が前に傾きやすくなります。骨盤が前傾すると重心が前に出すぎて、着地衝撃が下腿(すねからつま先)に集中しやすくなります。
こうした「上」の問題が積み重なって、最終的に「下」の脛に症状として現れる——これがシンスプリントの実態です。
自分でできるセルフチェック
股関節・体幹の機能に問題があるかどうか、簡単に確認できるチェックを2つ紹介します。
① 片脚スクワット
片脚で立ち、ゆっくりとスクワットをします(膝を軽く曲げる程度でOK)。
チェックポイント:膝が内側に入っていないか、骨盤が横に傾いていないか。
膝が内側に向いたり、骨盤が大きく横に揺れる場合、股関節外転筋や体幹の安定性に課題がある可能性があります。
② プランク保持
うつ伏せの状態から、肘とつま先で体を支えるプランクを30秒キープします。
チェックポイント:腰が反っていないか、骨盤が左右どちらかに傾いていないか。
腰が落ちたり、体が左右にぶれる場合は、体幹の安定性を高めるトレーニングが有効です。
改善のアプローチ:上から整える
シンスプリントの根本改善には、痛みが落ち着いてきた段階で「上」を整えるアプローチが必要です。
股関節外転筋の強化
横向きに寝て、上側の脚をゆっくり上げ下げする「サイドライイングヒップアブダクション」は、中殿筋を鍛えるシンプルな運動です。左右各15〜20回、毎日続けることで骨盤の安定が高まります。
体幹トレーニング
プランクやデッドバグ(仰向けで腕と脚を対角線に伸ばす運動)を日課にすることで、走行中の骨盤の安定性が上がります。
腸腰筋のストレッチ
片膝をついたランジのポーズで、前に出した脚の反対側の股関節前面をゆっくり伸ばします。左右各30秒、走る前後に行うと効果的です。
走り方の見直し
着地を足の真下に近い位置で行う意識を持つことで、脛への衝撃を分散できます。ストライドを少し小さくして、接地回数(ピッチ)を上げるイメージで走るのも有効です。
合わせて使いたいケアグッズ
トレーニングやストレッチと並行して、道具を活用することも回復の助けになります。
コンプレッションソックス(着圧ソックス)
走行中の脛・ふくらはぎへの振動を抑え、筋肉のブレを軽減します。シンスプリントの予防・再発防止にも使われることが多いアイテムです。長距離ランやロードが続く時期に特におすすめです。
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マッサージガン
走った後のふくらはぎや脛周辺の筋肉をほぐすのに役立ちます。アイシングだけでは届かない深部の疲労をリリースでき、翌日の回復スピードが変わります。コンパクトで使いやすいタイプが継続しやすくおすすめです。
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まとめ
シンスプリントは「すねの痛み」ですが、原因は足だけにあるわけではありません。
股関節・骨盤・体幹という「上」の機能低下が、脛への過負荷につながっていることがほとんどです。痛みが出た箇所だけをケアしていても繰り返してしまうのは、そのためです。
理学療法士的な視点でからだ全体を見直すことで、シンスプリントは根本から改善できます。まずは今日紹介したセルフチェックと、股関節・体幹のトレーニングから始めてみてください。
次回は、「アキレス腱を壊すランナーが無意識にやっていること」をテーマにお届けします。アキレス腱のトラブルにも、実は共通した「上」の問題が隠れています。
ぜひ引き続きお読みください。


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