「片脚で立つと、足裏がぐらぐらする」
「走っていると、後半に膝が内側へ入る」
「体幹トレーニングはしているのに、着地が安定しない」
ランナーさんから、こういう相談をよく受けます。
走る動きは、見た目には前へ進んでいるだけのように見えます。でも実際には、右足、左足と、片脚支持をすばやくくり返している運動です。つまり、ランニングは「片脚立ちの連続」でもあります。
片脚で体を支えるときにバランスが崩れると、膝が内側へ入る、骨盤が左右に揺れるなど、ランニングフォームの乱れにつながります。その状態で走り続けると、走る効率が落ちるだけでなく、膝や股関節、足首などへの負担が増えることもあります。木のポーズを通して、安定した片脚支持を目指していきましょう。
第5回は、ヨガの「木のポーズ(ヴリクシャーサナ)」を、ランナーの片脚バランス、足裏、股関節外側の安定という視点から見ていきます。

木のポーズは、ランナーの何に効くの?
木のポーズは、片脚で立ち、もう一方の足を軸脚の内ももやふくらはぎに添えるポーズです。静かなポーズに見えますが、体の中ではかなり多くの調整が起きています。
- 足裏で床を感じる力
- 足首の細かなバランス調整
- 膝を正面へ向け続ける意識
- 骨盤を水平に保つ股関節外側の働き
- 呼吸を止めずに姿勢を保つ体幹の安定
ランニングでいうと、着地した瞬間に体が左右へ流れすぎないこと、膝が内側へ倒れすぎないこと、足裏で地面を押し返せることにつながります。
原因1:足裏のセンサーが眠っている
片脚で立つとすぐにぐらつく人は、筋力だけが原因とは限りません。足裏には、床の硬さや傾き、重心の位置を感じ取る感覚受容器があります。
木のポーズで大切なのは、足指で床をつかみすぎることではありません。親指のつけ根、小指のつけ根、かかとの3点を床に置き、その上に体重を静かに乗せることです。
原因2:膝だけで正面を向こうとしている
木のポーズで軸脚の膝が内側へ入る人は、走っているときにも同じクセが出やすいです。ただし、膝そのものを外へ押し出せばよいわけではありません。
特に大切なのは、股関節の外側にある中殿筋や深層外旋筋群です。これらは、片脚で立ったときに骨盤が横へ落ちすぎないように支える筋肉です。

原因3:骨盤が横へ逃げている
片脚で立ったとき、軸脚側のお尻を横へ突き出すように立つ人がいます。一見バランスが取れているように見えますが、これは骨盤を筋肉で支える代わりに、関節へ寄りかかっている状態です。
この立ち方がクセになると、走っているときにも着地のたびに骨盤が左右へ揺れやすくなります。すると、腰、股関節、膝、足首のどこかに余分な負担が出やすくなります。
原因4:上半身でバランスを取ろうとしている
片脚立ちで腕や肩がすぐに固まる人は、上半身でバランスを取ろうとしているかもしれません。ランニングでも、疲れてくると肩が上がる、腕振りが左右に大きくなる、首に力が入る、ということがあります。
セルフチェック:あなたの片脚支持はどうなっている?
- 足指が強く丸まっていないか
- 親指側だけ、小指側だけに体重が偏っていないか
- 軸脚の膝が内側へ入っていないか
- 骨盤が片方へ大きく傾いていないか
- 腰を反らせてバランスを取っていないか
- 呼吸が止まっていないか
10秒立てるかどうかより、「どこで崩れやすいか」を観察することが大切です。そこに、今の走りのヒントが隠れています。
ランナー向け:木のポーズのやり方
- 足を腰幅にして立ち、足裏の3点を床に置きます。
- 右足に体重を移し、右膝を軽くゆるめます。
- 左足の裏を、右の内くるぶし、ふくらはぎ、または内ももに添えます。
- 左足を右膝の真横に直接押し当てないようにします。
- 骨盤を正面へ向け、左右の腰骨の高さをそろえます。
- 両手は胸の前、または腰に添えます。
- 鼻から息を吸い、吐きながら軸脚の足裏で床を押します。
- 20〜30秒保ち、反対側も行います。
走る前と走った後、どう使う?
走る前は、長く止まるよりも「感覚を起こす」使い方がおすすめです。左右10〜15秒ずつ、足裏の3点を感じ、膝とつま先の向きをそろえます。
走った後は、疲労でどちら側が不安定になっているかを確認します。左右差が大きい場合は、無理に長く保とうとせず、壁に触れながら呼吸を整えるだけでも十分です。
木のポーズを続けやすくするための道具
木のポーズは裸足でもできますが、床が硬い場所ではヨガマットがあると足裏の感覚を確認しやすくなります。厚すぎるマットではぐらつきやすいこともあるので、足裏で床を感じやすく、立位のポーズでも安定しやすいものを選ぶと続けやすいです。
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痛みがあるときの注意点
木のポーズ中に、膝の内側、股関節の前側、足首に鋭い痛みが出る場合は中止してください。
膝に不安がある人は、足裏を内ももまで上げず、内くるぶしの横に軽く添える形から始めます。足を上げる高さより、軸脚の膝が正面を向いていることを優先します。
まとめ:木のポーズは、片脚で走る自分を映す鏡
木のポーズは、派手な柔軟性を見せるポーズではありません。足裏で床を感じ、膝の向きを整え、股関節外側で骨盤を支え、呼吸を止めずに立つ。これはそのまま、ランニングの着地を安定させる土台になります。
速さを求めるランナーや、地面からの反発を効率よく受け取りたい人、カーボンプレート入りシューズを履く人にとっても、片脚で安定して体を支える力は大切です。接地時間をただ短くしようとするのではなく、短い接地の中でも足裏・膝・股関節が連動して体を支えられることが、次の一歩につながります。
ぐらつくことは失敗ではありません。ぐらつきは、体が今どこを調整しているかを教えてくれるサインです。


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